成年後見人の報酬は、後見人本人や家族が自由に決めるものではありません。
後見人が家庭裁判所へ報酬付与を申し立て、裁判所が仕事の内容や本人の財産などを見て金額を決めます。決定された報酬は、原則として支援を受ける本人の財産から支払われます。
この基本を知らないと、「専門職から毎月請求されると思わなかった」「家族なら自由に受け取れると思った」といった行き違いが起こります。
この記事でわかること
- 後見人の報酬を決める人
- 本人や家族の負担の考え方
- 親族間のトラブルを防ぐ方法
誰が報酬額を決めるのか
法定後見では、成年後見人、保佐人、補助人が報酬を希望する場合、家庭裁判所へ申立てを行います。
家庭裁判所は、提出された報告書、財産目録、収支状況、業務内容などを確認して報酬額を決めます。後見人と本人の家族が合意しても、それだけで本人の財産から支払うことはできません。
報酬付与の審判前に後見人が自分で金額を引き出すと、不適切な財産管理と判断されるおそれがあります。
報酬を支払うのは誰か
報酬は、本人の財産から支払うのが原則です。申立人や家族が個人で負担する仕組みではありません。
ただし、本人の財産から支払う以上、長期的な収支への影響を考える必要があります。年金収入、施設費、医療費、税金、住居費などを差し引き、生活に必要な資金を守ることが先です。
資力が乏しい方には、市区町村の成年後見制度利用支援事業が使える場合があります。対象者、助成額、申請時期は自治体ごとに違います。
金額は何をもとに決まるのか
家庭裁判所は、主に次の事情を踏まえて報酬を判断します。
- 管理する財産の額と内容
- 日常的な財産管理や契約の業務量
- 本人の生活や福祉に関する調整の難しさ
- 不動産売却、遺産分割、訴訟対応など特別な仕事の有無
- 後見期間や報告内容
財産額だけで一律に決まるわけではありません。同じ預貯金額でも、定期的な支払いだけの案件と、複数の不動産や親族調整が必要な案件では負担が異なります。
裁判所が公表する目安が参考になることはありますが、個別の審判額を保証するものではありません。将来の総額を正確に固定することも困難です。
基本報酬と付加報酬
報酬は、日常の後見事務に対する基本的な部分と、特別に難しい仕事への評価を含めて判断されることがあります。
日常の仕事には、通帳管理、支払い、契約、定期報告などがあります。
一方、不動産を売却して本人の施設費を確保した、複雑な遺産分割を整えた、財産被害を回復したといった特別な対応は、追加の評価対象になる場合があります。
ただし、後見人が自分で「これは特別な仕事だから追加で受け取る」と決めることはできません。具体的な仕事と結果を家庭裁判所へ報告し、審判を受けます。
家族が後見人になった場合
親族後見人も、家庭裁判所へ報酬付与を申し立てることができます。家族だから無報酬と決まっているわけではありません。
反対に、介護に時間を使った、遠方から何度も通ったという理由だけで、本人の口座から自由に日当や交通費を受け取れるわけでもありません。後見事務として認められる支出か、本人の利益のために必要かを区別します。
家族間のトラブルを防ぐには、報酬を受け取るかどうかにかかわらず、通帳、領収書、支出理由を残すことが大切です。
監督人の報酬も確認する
家庭裁判所が成年後見監督人を選任した場合、監督人にも報酬が付与されることがあります。
任意後見は、任意後見監督人が選任された時点で始まります。そのため、任意後見人への報酬だけでなく、監督人の報酬が本人の財産から支払われる可能性も見込んでおく必要があります。
任意後見人の報酬は、任意後見契約で定めるのが一般的です。一方、任意後見監督人の報酬は家庭裁判所が決めます。
起こりやすい3つのトラブル
報酬と実費を混同する
後見事務のために支払った郵便料や証明書代などの実費と、後見人自身の報酬は別です。支出の区分と根拠を記録しておきます。
家族が事前に総額を確定したと思い込む
法定後見の報酬は家庭裁判所が個別に決めます。専門職が選任される期間や、監督人が付くかどうかも含め、申立て前に確定できない部分があります。
本人のお金を家族のお金として扱う
本人の財産から、家族の生活費、将来の相続人への贈与、根拠のない立替精算などを支出すると問題になります。本人のための支出かを常に確認します。
トラブルを防ぐ確認項目
- 報酬を誰が決めるか
- 本人の財産から支払う費用は何か
- 後見人以外に監督人の報酬が生じる可能性はあるか
- 日常経費と報酬をどう分けて記録するか
- 本人の生活費を差し引いても長期的に支払えるか
申立て前にこれらを家族で共有しておくと、制度開始後の驚きを減らせます。
まとめ
法定後見人の報酬は、後見人の申立てを受けて家庭裁判所が決め、本人の財産から支払います。家族が後見人でも同じ原則が適用されます。
任意後見では、任意後見人の報酬は契約で定め、任意後見監督人の報酬は家庭裁判所が決めます。
金額だけでなく、誰に、いつまで、どの財産から支払う可能性があるかを把握することが大切です。田中司法書士事務所では、申立て前に費用と報酬の違いを整理し、ご家族が判断できる材料をお伝えします。
報酬額は家庭裁判所が個別に判断します。公表されている目安や過去の事例と同額になるとは限りません。
