成年後見人になるために、司法書士や弁護士などの国家資格が必須というわけではありません。家族や親族が選ばれることもあります。

ただし、「家族だからなれる」「本人が希望したから決まる」という制度でもありません。最終的に選ぶのは家庭裁判所です。

成年後見人の役割は、本人の財産と暮らしを長期にわたって守ることです。親族の希望より、本人にとって安全で適切かどうかが優先されます。

この記事でわかること

  • 成年後見人になれる人の範囲
  • 家庭裁判所が選任時に見る点
  • 家族が候補になる前の準備

成年後見人には誰がなれるのか

成年後見人には、親、子、きょうだい、配偶者などの親族が選ばれる場合があります。司法書士、弁護士、社会福祉士などの専門職や、社会福祉法人などの法人が選任されることもあります。

一方、法律上の欠格事由に該当する人は選ばれません。また、本人と訴訟をしているなど利害が対立する関係や、財産管理を任せることが難しい事情がある場合も、候補者として適切ではないと判断される可能性があります。

年齢、仕事、居住地だけで機械的に決まるわけではありません。本人の状態と必要な支援に対して、継続して役割を果たせるかが見られます。

家族が候補になるまでの流れ

法定後見では、申立書に後見人等の候補者を記載できます。

候補となる家族は、本人との関係、経歴、収入、負債、本人の財産を管理できる理由などを説明します。家庭裁判所から面接や追加資料の提出を求められることもあります。

ここで誤解しやすいのが、候補者欄は「指名」ではない点です。家庭裁判所は候補者以外の人を選ぶことができ、専門職や法人を選任する場合もあります。

また、誰が選ばれたかを見てから申立てを自由に撤回することはできません。申立て後の取り下げには、家庭裁判所の許可が必要です。

家庭裁判所が見る主なポイント

本人との関係と本人の意向

これまでの関わり方、信頼関係、本人が候補者をどう受け止めているかが確認されます。

ただし、本人の希望だけで決まるわけではありません。本人の利益を守れるかという観点と合わせて判断されます。

財産の内容と管理の難しさ

預貯金だけなのか、複数の不動産、賃貸収入、有価証券、事業、負債などがあるのかで、必要な管理能力が変わります。

高額または複雑な財産がある場合、専門職が選ばれたり、親族後見人に加えて監督人が選ばれたりすることがあります。後見制度支援信託や後見制度支援預貯金の利用が検討される場合もあります。

親族間の意見や利害関係

親族間に強い対立がある、候補者が本人の財産を借りている、遺産分割で本人と候補者の利害がぶつかるといった事情は、選任判断に影響します。

本人と後見人の利益が対立する手続きでは、別の人を選ぶ必要が生じることもあります。

継続して報告できるか

後見業務は、選任時だけの仕事ではありません。通帳、領収書、契約書を管理し、財産目録や収支状況を家庭裁判所へ報告します。

遠方に住んでいる、仕事や介護で時間が取れない、書類管理に不安がある場合は、無理なく続けられる体制があるかを考える必要があります。

選任後に行う仕事

成年後見人の主な仕事は、次の2つです。

  • 預貯金、収入、支出、不動産などを管理する財産管理
  • 介護、福祉、住まい、医療に関する契約を整える身上保護

選任後は、本人の財産を家族の財産と明確に分けます。親族への貸付け、慣例的な贈答、相続を見越した贈与なども、家族内の判断だけでは行えません。

後見人は「家族の代表」ではなく、「本人の利益を守る立場」です。この切り替えができるかどうかが、実務ではとても大切です。

専門職が選ばれやすいケース

次の事情があると、家庭裁判所が専門職を選ぶ可能性があります。

  • 管理する財産が高額または複雑
  • 不動産の売却や遺産分割を予定している
  • 親族間に対立がある
  • 候補者と本人の間に金銭の貸し借りがある
  • 虐待や財産流出のおそれがある
  • 頼れる親族がいない

専門職が選ばれると、家庭裁判所が定めた報酬を本人の財産から支払うことがあります。費用面だけでなく、第三者が入ることで財産管理の透明性が高まる利点も含めて考える必要があります。

家族が後見人を目指す前の確認

候補者になる前に、次の点を家族で確認しておくと判断しやすくなります。

  1. 本人のためだけに財産を使う原則を守れるか
  2. 領収書や通帳を継続して管理できるか
  3. 他の親族へ説明できる状態を保てるか
  4. 長期にわたる家庭裁判所への報告を続けられるか
  5. 自分の相続上の利益と本人の利益を分けられるか

難しい項目があっても、家族として失格という意味ではありません。介護や見守りは家族が担い、財産管理は専門職に任せる分担もあります。

まとめ

成年後見人に特別な資格は必須ではありませんが、候補者がそのまま選ばれる保証はありません。家庭裁判所は、本人の意向、財産、家族関係、利害対立、継続的な管理能力などを総合して判断します。

家族が選ばれることだけを目標にするのではなく、本人にとって安全で続けられる支援体制を作ることが先です。

田中司法書士事務所では、後見人候補者に求められる準備や、申立書類の作成を支援しています。家族で担う範囲に迷う場合も、現在の状況から整理できます。

選任基準や運用は個別事情と家庭裁判所の判断によります。候補者の記載は選任を保証するものではありません。