成年後見制度の費用は、申立て時の一時的な支出と、制度が始まったあとの継続的な支出に分かれます。

「申立てに数万円あれば足りる」と聞くことがありますが、それだけで総額を判断するのは危険です。医師の鑑定が必要か、書類作成を専門家へ依頼するか、専門職後見人や監督人が選ばれるかで負担は変わります。

この記事では、費用の全体像をモデルケースとともに整理します。

この記事でわかること

  • 申立て時に必要な実費
  • 鑑定や専門家費用が生じる場面
  • 制度開始後の継続費用

費用は4つに分けるとわかりやすい

成年後見制度に関する主な支出は、次の4つです。

  1. 家庭裁判所へ納める申立手数料や登記手数料
  2. 郵便料、戸籍、住民票、診断書などの実費
  3. 必要な場合に行われる医師の鑑定費用
  4. 専門家への書類作成費用や、選任後の後見人等の報酬

申立て時と開始後を混ぜずに見積もることが大切です。

申立て時に必要となる費用

法定後見開始の申立てでは、一般に次の費用がかかります。

項目金額の目安注意点
申立手数料800円分の収入印紙申立内容により追加が生じる場合がある
登記手数料2,600円分の収入印紙成年後見登記のために必要
郵便料数千円程度金額と納め方は家庭裁判所ごとに異なる
戸籍・住民票・登記事項証明書など数千円程度取得する通数や方法で変わる
医師の診断書等医療機関ごとに異なる本人情報シートの準備が必要な場合もある

ここまでの実費は、鑑定がなく、自分で書類を準備するケースなら、おおむね1万円台に収まることがあります。ただし、これは全国一律の確定額ではありません。

家庭裁判所の郵便料や書式は変更されることがあります。申立て前に、管轄裁判所の最新案内を確認してください。

鑑定費用が必要になる場合

家庭裁判所が本人の判断する力を詳しく確認する必要があると判断した場合、医師による鑑定が行われます。

鑑定費用は事案や医療機関により異なり、数万円から10万円前後になることがあります。家庭裁判所から金額を示され、予納を求められた場合に納めます。

すべての申立てで鑑定が実施されるわけではありません。診断書の内容、本人の状態、求める類型などを踏まえて家庭裁判所が決めます。

専門家へ依頼する費用

司法書士へ申立書類の作成を依頼する場合、事務所の報酬が別に必要です。

報酬は、財産や親族の数、不動産の有無、資料の整理状況、申立ての内容などで変わります。戸籍の取得、財産資料の整理、裁判所からの照会対応に必要な準備が多いほど、業務量も増えます。

依頼前には、次の区分を確認してください。

  • 司法書士報酬に含まれる業務
  • 戸籍や郵便料などの実費
  • 追加資料や追加対応が生じた場合の費用
  • 申立て後、後見人に選ばれた場合の報酬とは別であること

田中司法書士事務所の具体的な料金は、手続き内容を確認したうえで、依頼前に見通しをお伝えします。

制度開始後の報酬

成年後見人、保佐人、補助人、各監督人が報酬を受け取るには、家庭裁判所へ報酬付与の申立てを行います。

金額を決めるのは家庭裁判所です。本人の財産額、管理内容、業務の難しさ、特別な仕事の有無などを踏まえて判断され、本人の財産から支払われます。

家族が後見人になった場合も、自由に金額を決めて受け取ることはできません。反対に、親族後見人だから無報酬と決まっているわけでもありません。

制度は原則として長期間続きます。月額の目安だけでなく、何年続く可能性があるかを含めて考える必要があります。

3つのモデルケース

以下は費用の構造を理解するための例です。実際の依頼事例ではなく、金額を保証するものでもありません。

ケース1 家族が書類を準備し、鑑定がなかった

本人の財産が預貯金中心で、親族間の対立もなく、家族が申立書類を準備したケースです。

  • 収入印紙 3,400円程度
  • 郵便料 数千円程度
  • 証明書や診断書 数千円から1万円程度
  • 鑑定費用 なし
  • 専門家への書類作成費用 なし

申立て時の支出は、合計で1万円台から数万円程度になる可能性があります。開始後に後見人等の報酬が決まれば、別に継続費用が発生します。

ケース2 司法書士へ書類作成を依頼した

預貯金と不動産があり、資料整理や申立書類の作成を司法書士へ依頼するケースです。

裁判所へ納める実費、診断書や証明書の費用に加え、司法書士報酬が必要です。報酬額は事務所と案件ごとに異なるため、見積書で「実費」と「報酬」を分けて確認します。

ケース3 鑑定が行われ、専門職が選ばれた

本人の判断する力を詳しく確認する必要があり、鑑定を実施。家庭裁判所が専門職後見人を選んだケースです。

申立て時には通常の実費と鑑定費用がかかります。制度開始後は、家庭裁判所が定めた専門職後見人の報酬を、本人の財産から支払う可能性があります。

費用で後悔しないための確認項目

  1. 申立て時の実費はいくらか
  2. 鑑定が必要になった場合、いくら見込むか
  3. 専門家の報酬に何が含まれるか
  4. 後見人や監督人の継続報酬が生じる可能性はあるか
  5. 本人の収支で長期的に支払えるか

資力が乏しい場合には、自治体の成年後見制度利用支援事業などを利用できることがあります。対象要件や支援内容は自治体によって異なるため、本人の住所地の市区町村へ確認が必要です。

まとめ

成年後見制度の費用は、申立て時の実費、鑑定費用、書類作成を依頼する報酬、制度開始後の後見人等の報酬に分かれます。

鑑定の有無や選任される後見人によって総額が変わるため、「申立費用だけ」で判断しないことが重要です。

田中司法書士事務所では、ご事情を伺ったうえで、申立てに必要な費用の区分と当事務所の報酬を事前にご説明します。あとから想定外の負担が生じないよう、まず全体の見通しをご確認ください。

記載額は一般的な目安です。収入印紙、郵便料、鑑定費用、専門家報酬は、申立内容、家庭裁判所、医療機関、事務所により異なります。公開前と申立て前に最新情報をご確認ください。