成年後見制度の申立ては、書類を提出したら終わりではありません。
本人の判断する力、生活状況、財産、家族関係、後見人等の候補者を家庭裁判所が確認し、本人に合った支援を決める手続きです。
申立て後は、家庭裁判所の許可なく自由に取り下げられないのが原則です。だからこそ、提出前の整理が重要になります。
この記事でわかること
- 申立てから審判までの流れ
- 一般的に準備する書類
- 提出前と選任後の注意点
全体の流れ
法定後見の申立ては、次の順で進むのが一般的です。
- 本人の状態と困りごとを整理する
- 管轄の家庭裁判所と申立人を確認する
- 診断書や財産資料などを集める
- 申立書類を作成して提出する
- 家庭裁判所の面接や調査を受ける
- 必要に応じて鑑定を行う
- 審判と登記を経て支援が始まる
申立てから審判までの期間は、案件の内容や裁判所の状況によって変わります。急ぎの事情がある場合も、予定を先に決めず、早めに管轄裁判所や専門家へ相談することが大切です。
手順1 本人の状態と目的を整理する
最初に確認するのは、「後見制度を使いたい」という希望ではなく、「本人の暮らしで何ができずに困っているか」です。
たとえば、施設入所の契約が必要、預金が引き出せず生活費を払えない、不動産の管理が止まっている、悪質商法による被害が心配といった事情です。
そのうえで、本人が自分でできる行為も確認します。支援は広ければよいわけではありません。残っている力を活かし、必要な範囲にとどめる視点が求められます。
手順2 誰がどこへ申し立てるかを確認する
申立先は、原則として本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。
申立てができる人には、本人、配偶者、4親等内の親族などが含まれます。身寄りがない場合などには、市区町村長が申し立てる仕組みもあります。
「家族が住んでいる地域の裁判所」ではなく、「本人の住所地」が基準です。施設に入所している場合は、住民票だけでなく実際の生活状況も含め、事前に裁判所へ確認すると行き違いを防げます。
手順3 必要書類を集める
一般的に準備する資料は、次のとおりです。
- 申立書、申立事情説明書、親族関係図
- 本人の戸籍謄本、住民票など
- 医師の診断書、本人情報シートなど
- 成年後見登記がされていないことの証明書
- 預貯金、保険、有価証券、不動産、負債の資料
- 年金や給与などの収入、生活費や施設費などの支出資料
- 後見人等候補者に関する書類
必要書類や書式は家庭裁判所によって異なることがあります。古い書式を使わず、申立先の最新案内を確認してください。
財産資料は、残高だけでは不十分です。通帳の写し、固定資産税の資料、保険証券、借入金の明細など、財産の動きと全体像がわかる形に整えます。
手順4 申立書類を提出する
書類がそろったら、管轄の家庭裁判所へ提出します。
この段階で、希望する後見人等の候補者を書くことはできます。ただし、候補者の選任が保証されるわけではありません。本人との関係、財産管理の難しさ、親族の意向、利益相反の有無などをもとに、家庭裁判所が判断します。
提出前には、申立ての目的と資料の内容が一致しているかを確認します。たとえば、不動産売却が必要なのに物件資料がない、親族間の対立があるのに説明がないと、追加照会が増える原因になります。
手順5 家庭裁判所の面接・調査を受ける
申立人や候補者への面接、本人との面談、親族への意向照会などが行われることがあります。
質問されるのは、本人の日常生活、判断する力、後見を必要とする事情、財産、今後の支援方針などです。取り繕うより、わからない点を含めて正確に伝えることが重要です。
裁判所の調査官が本人と面談する場合もあります。本人の意思を確認し、どこまで支援が必要かを見極めるためです。
手順6 必要に応じて鑑定を行う
家庭裁判所が必要と判断した場合、医師による鑑定が行われます。申立て時の診断書とは別の手続きで、鑑定費用の予納を求められることがあります。
すべての案件で鑑定が行われるわけではありません。実施の有無や金額、日程は家庭裁判所の指示に従います。
手順7 審判後に後見業務が始まる
家庭裁判所が後見・保佐・補助の開始と、成年後見人等を決めます。審判が確定すると、その内容が登記されます。
選任された人は、本人の財産を確認し、所定の期間内に財産目録や収支予定を家庭裁判所へ提出します。その後も、財産管理や身上保護の状況を定期的に報告します。
家族が選ばれた場合も、家庭内の手伝いとは扱いが違います。本人のお金と家族のお金を分け、領収書や通帳を保管し、説明できる状態を続ける必要があります。
申立て前に確認したい注意点
- 申立て後は、希望と違う後見人が選ばれたことだけを理由に取り下げることはできない
- 一度始まると、本人の判断する力が回復するなどの事情がない限り、原則として本人が亡くなるまで続く
- 後見人等の報酬が決まった場合は、本人の財産から支払う
- 家族のための贈与や相続対策は、本人の利益にならないとして認められないことがある
制度の長期的な影響まで理解したうえで申し立てることが、後悔を防ぎます。
まとめ
成年後見制度の申立てでは、本人の状態と困りごとを整理し、管轄確認、資料収集、書類提出、家庭裁判所の調査、審判という順に進みます。
書類の量は多いものの、中心にあるのは本人の暮らしです。「何のために、どの範囲の支援が必要か」が一貫していれば、準備すべき情報も見えやすくなります。
田中司法書士事務所では、法定後見の申立書類作成を支援しています。戸籍や財産資料がまだそろっていなくても、現在の状況から整理できます。電話またはメールでご相談ください。
必要書類、費用、運用は家庭裁判所や案件により異なります。提出前に管轄の家庭裁判所の最新書式と案内をご確認ください。
